[58] 私の愛が、貴方を殺す

2007/11/23 (Fri.) 22:58:52

 

「なぜ…兄上は私を」

「憎んでいる。妬ましくて疎ましくて厭わしい」

波ひとつたつことない、冷たく凪いだ瞳で、静かに彼は告げる。

「だが、それ以上に愛している。お前は、父上の望みをかなえるただ一人の存在だから」

するりと伸ばされた繊指が伸び、この上なく柔らかく羽が触れるようにしてそっと男の輪郭を辿っていく。

 

「嗚呼。」

 

感に堪えないとばかりに吐息を落とし、じわりとただ美しいばかりで人形のように感情のない顔面を緩ませた。

 

「お前は、本当に父上に似ているな」

 

そっとそっと愛しげに囁いて、未練もなく彼は憎んでやまない、愛してやまない弟の脇をすり抜けていった。

 

「兄上!!」

 

追いすがるように振り返って、しかし拒絶を示すその背にそれ以上動くことすらできず彼は立ち尽くし見送った。

 

弟の悲鳴染みた切迫した声にも心揺らすことなく歩みを進める彼は、前方に認めた男につと足を止めた。

彼とはまた別種の整った冷淡な顔に、常にはない焦燥を滲ませた男。それに、やはり静謐な眼差しを彼は送る。

 

「行くな」

 

続く沈黙を破り、男はそう口にした。

 

「欲しいものがあるなら私がくれてやる。望みならば全て叶えてやる」

 

だから、行くなと告げる男はそうとは取れないが懇願しているのだ。

 

首を僅かに傾げる動作に、指どおりのいい皇かな髪がさらりと流れ落ちた。

幾度か絡め、その手触りを確かめた銀色。

 

「望みなら、当にかなっている」

 

耳障りのいい、美しい声。

それが悲痛に引きつる響きも、愉悦になく響きすら知っていても、愛が滲む」響きはしらない。

彼がたった一人執心した、先ほどの弟との別離の時以外。

 

「もう、ずっと前に」

 

「私は私の願いを得た」

 

「お前には、すまないと思っている」

 

「契約を破ってしまうことになって」

 

「恨んではいるが、お前のおかげで助かったことも事実だ」

 

「できたらこれからもアレを助けてほしいが、無理だろうな」

 

「お前は、得がなければ動かない男だから」

 

「けれど、あれもこうなったからには自身の立場を自覚するだろうかあそれほど心配はしていないが」

 

 

振り返ることなく去っていく、美しいお前。

 

最初からそうだった。

お前の瞳はただひとつの愛だけを映し、他の一切を求めてなどいなかった。

 

ただ凛とたつ、

美しいお前。

 

 

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Re:私の愛が、貴方を殺す

2007/11/23 (Fri.) 23:11:37

 

「なぜお前が行く」

王位継承権を持つ子供は、二人いるだろう。

「下の子のほうは。アレがかわいがっているからな」

「ちょうどいいからだ。私の血筋が継ぐことなどあってはならない。だから残していく下のほうにも、処理は済ませている」

「王位を継ぐのも、血をつないでいくのもアレだ」

「何故だ」

「それが父上の望みだからだ」

「父が何故死んだか知っているか?」

「あの戦域で艦が被弾したからだろう」

「そう。だが、本当には違う」

「本当なら、父は生きているはずだった。直劇を受けたとはいえ、無事なはずだったのだ」

「父は私を庇って死んだ」

「おかしな話だろう?本来最も優先すべきは王たる父の命で、ついで弟の命であるべきだ」

「私のようなものの命を守るべきではない」

「だが、父はあの瞬間誰でもなく私を庇った」

「弟に手が伸びなかったからとか、そういうことではなく、間違いなく私を選んで」

「父は弟をこの上なく大切に扱ったが、それは王位を引き継ぐ正当な継承者としてであり、私のことを子供としいて愛していてくれたのだ」

「それだけで、もうなにひとつとていらない」

「ずっとずっと、恐ろしかった。おびえていた」

「ふぐの私は、弟が生まれた今となっては、もしもの時の予備にしかならない、いつ、殺されるかと」

「だが、そうではなかった」

「だからもう、何もいらないのだ」

「ただそれだけ、もう」

「だから私は、父の望みどおりに、アレを王位につけ、その血筋をつながせていく」

「私の血などいらない」

 

Re:私の愛が、貴方を殺す

2007/11/24 (Sat.) 00:03:32

 

兄:帝国に数ある王家のひとつの当主。とある身体的特色から、本来なら王位に着くどころか処分されるべき存在。が、繁殖力の弱い血筋のため、彼以外の子供ができる確率が限りなく低い。そのため、保険として王位継承者として生かされてきた。弟が生まれた時点でいつ処分されてもおかしくない立場に立ちつ。その秘密を知るのは両親のみ。(他は殺された)

容姿は抜群だが、執政能力も身体能力も弟には及ばず、自信の体のこともあって強いコンプレックスを抱えている。

が、父が己を庇って死に、きちんと愛されていたことを知って以来、父の願いどおりに正常に生まれてきた弟にすべてを譲ることだけを目標に生きてきた。

弟が問題を起こしたため、いまだ王位を譲ることができずに頭を悩ませている。

対外的に身体的問題を隠すため正妃との間に2男を設けているが、それらに告がせる気は皆無。

 

男:冷酷冷淡。また別の王家の当主。虚栄よりも実益を取る帝国位置の権力者。

王族皇族貴族の弱みを握るため張り巡らせた長方網で兄に対して疑惑を抱き、確信してからは取引材料に使おうと考えた。

しかしそれをいざ告げて、要求を突きつけようとしたときに真っ青になって弟に王位を譲るまでは秘密にしておいてくれと必死に懇願されて気勢をそがれる。

はっきりいって兄に手をだしたのは興味本位。が、後々盲憎悪している筈の弟を必死になって更正させ王位につけようと盲目的な姿を見て気になってしょうがなくなる。

結構な子沢山

なので、兄の代わりに私の子供をさらに2に差し出すとまで言い出す始末。

 

弟:正常に生まれた弟。王位継承のため、厳しく育てられる。成人と同時に兄は王位をゆずるつもりだったが、とある問題を起こして身分剥奪の憂き目にすら会うところの問題児。

兄と兄が取引した男の力によって、どうにか身分剥奪は免れるもかなり微妙な立場に。

 

設定

とある種族の帝国が(従)、別種の築いた帝国(主)との古くからの契約により皇位継承者と王位継承者、もしくは皇帝・王をいけにえとして差し出さなければならない。

それに自ら赴く美貌の王。

胎に男との子を宿したまま敵国皇帝に嬲り殺されるところだった。が、それに気づいた敵国皇帝に処刑を見ることを余儀なくされていた属する帝国がわに秘密を棒路される.

それに男は、ならば契約の人数と会わない。その胎の子を変わりに差し出すので王を帰せと訴える。

しかし王一人の変わりは、王位継承権をもつもの2名だ。人数が合わないと却下する相手側に、それは私の子だとさらに関係をぼうろ。

王家2つの継承権を持っているので、取り決め内容でが問題ないはずだとさらに言い募る。

面白がって承諾した相手に胎の子を引きずり出され、帰還を許された兄王。

その後の兄王を取り巻くあまたの問題と、地上のもつれ話。

 

とあるサイト様に触発されて唐突に浮かんだオリジナルともいえないパロディ話。

や、根っからの二次創作好きなものですから。

しかしいいのかなー、これ

タイトルの「私の愛」は父親で、「貴方」は兄のこと

初めての子供で生まれてきてくれただけでうれしくて、しかしその身体的特徴から素直にかわいがることもできず王として冷淡な態度しかとれなかった父

無事第二子ができた後は、次男に譲った後兄を連れて所領でいひっそりと仲良くくらそうとか思ってた

じつは近親相姦なかんもあった親子です

血族の数が限りなく少ない種族なので、近親愛が強く余計に滅亡の憂き目に会いそうなカップルが多いんです。

主人公サイドの帝国は、敵国サイドの隷属。

餌として捕食されていた種族で、繁殖のために領土を与えられ独自の社会システムを作り上げたに過ぎない家畜的存在。

敵国サイドはある程度繁殖した彼らを捕食。(実際にカニバリズムだったり、快楽殺人だったり感情を食らったり普通に犯して楽しんだりと用途はさまざま。用は玩具扱い)

皇族・王族・貴族・平民と決まった数を謙譲させている。

上位階級の人間はブランド牛みたいなもので、敵国サイドにとっては物凄く美味しい。

 

実はいったんは返したんだけど、兄のことが気に入ってやっぱりあいつ寄越せと敵国皇帝が打診寄越してきたりで泥沼化します。

この隷属帝国の真の独立と、主人帝国との対等の関係を築くにいたった長い長い戦闘は実は男たちによるたった一人の両性具有の取り合いに過ぎなかったのです。(ちなみに弟も参戦)

あーうん。勝者は当然のことながらとっくに退場している父親だけどね。

はは

 

両性具有は歴史上からみても騒乱の種になるとして忌み嫌われていて、それが理由で生まれた即処分する決まりだった。

雄雌問わず狂わす独自のフェロモン(?)と美貌を持っているので、争奪戦が耐えなった。

捕食者がわからしてみてもかなり魅力的な素材で、これを生み出すためにいろいろ研究したりされた経緯があるので本当に嫌われた。

だからたまに生まれても即処分か献上が当たり前だった。

が、父親はその慣習を破って男として届けた。

この時点でだいーぶ父もやられてた模様。

 

 

 

[77] なんて酷い裏切り!!

2007/12/16 (Sun.) 10:57:57

 

ハレルヤ

褒め称える神など無く、貴方を体現する私は虚しい空言をただ呟く

ハレルヤ

貴方はどこに行ってしまったのですか

ハレルヤ

私の神

私の愛

私の絶望

私を捕らえて閉じ込めて愛した貴方は、どこへいってしまったのですか?

ハレルヤ

かえして下さい。

お願いです。

あの人を私に返してください。

ハレルヤ

嗚呼、貴方はそうして私からまた奪うのですね。

死故に喪失したのですは無く、貴方の裏切り故に私は貴方を失った。

ああ、その様な貴方など、私は見たくはなかった。

 

「さようなら、愛しい貴方。私の神」